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(前回までのあらすじ)
「世界一おいしいマンゴーを食べさせてやる!」
一人の女性との約束を守るためだけに、たったひとりでマンゴー栽培をはじめた土佐市の生産者Kさん。
苗木から育てあげたマンゴーは、数年後にたくさんの実をつけるようになりました。
「まだまだこんなもんじゃない!」「理想の味はこんなもんじゃない!」
意気込む矢先に訪れた2006年の冷夏・長雨。思わぬ自然からのパンチを受け、大きなダメージを受けながらも、夢の実現にむかって前進をつづけるKさんなのでした。
あれから2年・・・。
時は2007年2月。
冬とはいえ、そこは南国。
あたたかい陽射しがふりそそぐ土佐の高知の水曜日。
「ことしの花は、一段とキレイですよ!」
はやく来ないと花がおわっちゃうよ、の電話をいただいて、あわてて駆けつけました。
平日なので道もすいております。アッというまに到着~。
花の時季にくるのは2年ぶりだから、私もワクワクしております。
そうなんです、去年の高知は春先からの天候が大変わるくてほとんど晴れた日がなかったのです。病気発生や害虫発生の危険があったので、涙をのんで花の時季は訪問をご遠慮しておりました。
「こんにちわ~ぁ!」
・・・・返事がありません。
「かってに入りますよ~!」
大声を出しながらビニールハウスの中にはいると、、、、、!?
「お~~い!」
右を見ても、マンゴーの花。
「どこですか~ぁ?!」
左を見ても、マンゴーの花。
『・・・いったい、どうなってるんだ!?』
前にきたときには、すぐに生産者さんの姿が発見できたのに、今年はまったくの全然、前が見えません(汗)。
賢明なる高知マンゴー愛好者の読者さまならお気づきのことだと思いますが、ともかく以前とはまったく風景がちがいます。マンゴーの花はかわらないけれど、一面に咲き誇るその数に圧倒されました。
「中国の漢詩では『年々歳々花相似たり』っていうけれど、『年々歳々花不同(おなじからず)』じゃないか・・・。」
こころの中でブツクサいいながら、マンゴーの花を押しのけつつ生産者さんをさがします。
分け入っても、分け入っても、赤い花。
うーん、本当にいるんだろうか、と不安になったころ、ビニールハウスの奥で花を手入れしている生産者さんを発見!
「ようやく見つけた~!ここにいたんですか。」
「見つかりましたか。ここまで大変だったでしょう。」
花にまみれた生産者さんは、いつものように手を休めず、笑いながら静かにあいさつをしてくれました。
「・・・なんだか、花が増えてないですか?植樹したんですか!?」
「いえいえ、前と同じですよ。増えたんじゃなくて、木が大きくなったんです。」
「前は入り口入ったところから奥の方まで見通せたから、今日は本当にビックリしました(汗)。」
「密集すると風通しが悪くなるでしょ。だからこちらも増設しました。」
「サーキュレーター(送風機)ですね。うむむ、確かに、この状態なら必需品ですねえ。」
「昼間は天井を開放して空気を入れてます。開けすぎても病害虫発生の原因になりますけど。来年は通路をとおれなくなっちゃうかもしれませんね。」
「それにしても、茎まで真っ赤ですね。」
「今年はお日さまが良く当たってますから。あ、そうだ、昨年は出荷が少なくて申し訳なかったですね。」
「いえいえ、とんでもない!(汗)こちらこそ、大変だったと聞いていますけど・・・。」
「おととし(=2005年のこと)はある程度キチンとマンゴーをお届けできたと思うんですけど、去年は本当に残念でした。ギリギリまで手を尽くしたのですが、ほとんど出荷ができなくて・・・。」
昨年ご来店いただいた常連さまなら、すでにご存知のことなのですが・・・。昨年2006年は一年間、この「いごっそう突撃取材」をご案内できずに終わってしまいました。お話はうかがえたのですが、お伝えできる内容にするには少し時間が必要だろうと判断させていただいたのです。
昨年の高知はともかく気候最悪でした。春先の2月末くらいから長雨に見舞われてしまったのです。延々なんと7月に入るまで!!。被害を受けたのは、もちろんマンゴー生産者さんだけではありません。お芋も、メロンも、カリカリ桃子も、何もかもが大変な被害をうけました。
「なにしろ、ひと月に2,3日しか晴れた日がない状態が3,4ヶ月続きましたもんね・・・。」
「出荷できたものはすべてご満足いただけるものだったと思いますよ。悪天候は高知だけではなかったので、それを言い訳にはしたくないのですが、、、。日照不足だと病害虫が深刻です。僕は基本的に農薬の類はほとんど使わないけど、消毒するにも限度がありますから・・・。」
「いっしょに植えているこのパイナップルも、去年は全然太らないままでしたもんね。」
「最終的にはソフトボールくらいにしかならなくて・・・。泣く泣く、捨てましたよ~。」
「今年はどうなんですか?」
「ハッキリ言って、今年は非常に順調です!(笑)。」
「これはたのもしい(笑)。」
「花を見てもらえばわかりますが、今年は芯までシッカリ赤いでしょう。昨年は白いところが多かったんです。」
「それにしても、ハウス全部を見てまんべんなく赤いですね。これはスゴクないですか。何か特別なことを?」
「ないない、なんにもない(笑)。そうですね、ひとつだけ言うと、加温のシステムは変えましたね。昨年は今ごろポツポツと花の咲き具合のわるい木が点在したんです。今年はその木たちもキレイに色づいてます。」
「昨年、どの木がどうだった、というのをメモしているんですか?」
「いえ、それは覚えていますから、昨年の今時季の様子と今の状態を頭の中で見くらべているんです。」
「ええっ!?これだけのものを日時もあわせて覚えているんですか?」
「気候って、暑いとか寒いだけでなく、いろいろ特徴があって覚えやすいんですよ。そんなにビックリするようなことではないですよ(笑)。特に昨年は、この時季になっても茎に全然色がこなかったから、これは、、と思っていたから余計に覚えてるんです。」
そんなことを言いながら、ほら、これを見てください、とちぎった小さな実を渡してくれました。
「2月のこの時季にこんな大きさになってるんですか?(香りをかいでみて)・・・あ!この香りはまぎれもなくアップルマンゴーですね!!」
「順番に摘果していて、さわった感じからも今年は順調だなと思いますね。まぁ、これから昨年みたいに長雨が続いてしまうとどうなるかわかりませんけど・・・。」
「それにしても、あいかわらずたった一人で?」
「ええ。雑草取りはさすがに地元のシルバーさんたちに頼みましたけれど、それ以外はあいかわらず僕だけでやっておりますよ(笑)。」
「僕でも雑草取りくらいなら手伝えるのに。」
「雑草取りは大変重要なんですよ。雑草があると、余計な湿度を持ってしまうんです。いわゆる『低温多湿』の状態になるとカビが発生します。もちろん病気になりやすいし、害虫も発生する原因になるんです。」
「それにしても、マンゴーの樹が前より大きくなって一人でもてあますくらいになったら、手が入りにくくなるのが普通じゃないですか。このマンゴー畑は本当にキレイですよねえ。」
「うーん、これは僕だけの感性なのかもしれませんが、、、、。(ひと呼吸おいて)マンゴーに限らず、今まで僕が色々と見てきたところで言えば、キレイじゃないところで美味しいものを作っているところって、僕は見たことがないんです。だから、だと思います。」
「『外見農業』(※突撃取材第2号参照)は、決して見た目の美しさだけじゃない、ということなんですね(笑)。」
「ええ。ともかくマンゴーの表情を毎日見ながら、なんというか、その、ご機嫌をうかがう、といいますかね、気にかけてあげながら手を入れてあげることが重要だと思うんです。キレイじゃないところでご機嫌をうかがうことなんてありえないでしょう。」
「うむむ、僕の仕事場は雑然としているから、耳が痛いはなしだなあ(汗)。」
「あ、言っとくけど、僕の部屋の話はまた別ですよ(爆笑)。マンゴー畑だけは、僕の部屋より全然キレイだという自信はあります。」
「それにしても、今年の花は見事ですね。」
「今年で4年目になりますが、花が咲くまでは毎年本当に不安ですよ。今年だって本当に不安でした。」
「今年は温暖で日照時間も多いから、楽勝ムードだったということはないんですか?」
「全然!マンゴーだけじゃないですよ。花ってパッと咲かないことも多いんです。そのまま葉っぱになってオワリ、とかね。ちょっとしたタイミングの違いだけで花の咲き具合は大きくちがってきます。正直、今年もきれいに咲いてくれて、しかも茎までシッカリ赤い状態になってくれて、本当に感謝しています。」
話しの中で、何度も「よかった」「ありがたい」という単語が飛び出す生産者さん。本人はきっと気づいていないのでしょうね。
「今後の予定はどうでしょう?」
「花が咲いてくれたので、まずは第一ロケット切り離し成功です。このまま順調に水と温度管理をしていって、摘果選定作業をつづければ、そうですね、6月上旬には最初の出荷ができそうですね。」
「一昨年よりちょっと早めの出荷ですね。うまくいくといいなあ。」
「そうですね、うまくいくといいですね。マンゴーは本当にむずかしいです。これで極めた!なんてことは絶対になくて、『マンゴーは(作る者が)飽きない』と言われる理由がよくわかります。」
「一本調子ではダメだと。」
「ダメですね。寒くなったから加温しよう、とか、そういう単純な対応だとまず失敗するでしょう。今は花を持っているから、これだけの湿度でここまで温度を上げておこう、とか。最近は毎年おおきく環境がかわるでしょう。だから今まで以上に臨機応変な対応が必要なんじゃないですかね。」
その大切さを去年まなびましたよ、と苦笑する生産者さん。今年は無事に出荷できるように、みなさんもぜひ応援してあげてください。
さてさて、次の訪問予定は5月!
ゴールデンウィークの頃に、大きくなったマンゴーの実の様子を拝見しに来たいと思っています。
本日も御忙しいなか、お邪魔をいたしました!!